朝顔を季語にして俳句を詠むときには注意が必要です!なぜなら、朝顔は秋の季語として分類されているからなんですね。
実際には暑い盛りに葉も花もよく繁る朝顔ですが、昔から秋を呼ぶ花として日本人に親しまれてきた経緯があります。
私自身も夏の趣味と言えば朝顔やゴーヤを育てることです。夏に毎朝花をつけてくれる朝顔ってとても可愛らしくなるんですよ。
この記事を目にされているあなたは趣味や学校の宿題などで俳句を詠まれる方でしょうか?でも7月、8月に朝顔を季語にして俳句を詠む場合には「これは秋の季語だな」って意識が必要です。
それでは何故、実際には夏の花である朝顔が秋の季語になるのか?調べてみるととても意外な事実がたくさん出てきました!
あわせて朝顔という季語はいつまでつかえるか?とか有名な俳句などもご紹介していきますので、ぜひ最後までお付き合いくださいね。
朝顔という季語はなぜ秋なのか
朝顔という季語が秋に分類される理由は次の二つに集約されます
- 季語は二十四節気という季節の区分に基づいているから
- 二十四節気は日本の実際の季節とはずれているから
朝顔が実際に最も力強く生い茂るのは8月の暑い盛りです。そして種類によっては10月頃まで花をつけ続けます。
この朝顔の実際の季節を二十四節気という季節区分に当てはめると、8月という朝顔が花をつける季節はすでに秋に分類されるんですよ。
二十四節気とは、古代中国で採用された季節の区分手法です。1年を24等分してそれぞれに季節の名前を当てはめたのでこのような名前なんですね。
現在でも日常的に使われたり時候の挨拶の言葉になっている物もたくさんあります。春分、秋分、夏至、冬至、立春、立夏、立秋、立冬、啓蟄、小暑、大暑、小寒、大寒などは耳にしたことがあるでしょう。
そして、これらの季節区分が現在の暦や実際の季節ではどの辺りに来るか、よく使われる部分をまとめてみました。
二十四節気 | 現在の暦 | 実際の季節感 |
立春 | 2月4日頃 | 冬(寒さのピーク) |
春分 | 3月20日、21日頃 | 春の初め |
立夏 | 5月5日、6日頃 | 春の終わり |
夏至 | 6月21日、22日頃 | 夏の初め |
立秋 | 8月7日、8日頃 | 夏(暑さも朝顔もピーク) |
秋分 | 9月23日頃 | 秋の初め(まだ花を咲かせる朝顔もある) |
立冬 | 11月7日、8日頃 | 秋 |
冬至 | 12月21日、22日頃 | 冬 |
二十四節気、日付、実際の季節感の関係はこのようになっています。二十四節気の日付に多少のずれがある理由は、現在の暦に当てはめて使うために地球から見た太陽の位置を基準にしているためです。
いずれにせよ、二十四節気と実際の季節感の間には1ヶ月以上のずれがあることが分かります。
二十四節気で春の初めの立春は実際には寒さのピークです。一方で二十四節気では春のど真ん中である春分は実際には春の初め頃にあたります。
実際の季節で最も熱いのは8月上旬ですが、二十四節気では8月7日、8日頃は秋の始まりである立秋に設定されています。前述のように、朝顔が最も勢いよく繁る季節はここです。
江戸時代に松尾芭蕉によって確立された俳句の季語はこの二十四節気に基づいているため、実際の季節感からズレている訳なんですね。だから朝顔は秋の季語とされているんですね。
朝顔という季語はいつまで使えるのか
朝顔という季語が最も適しているのは初秋です。具体的には8月8日頃から9月7日頃の間ですね。
前述のように種類によっては10月頃まで花をつける朝顔ですが、俳句の世界では9月7日頃までの季語として使うのが適切です。
古来、朝顔は秋の訪れを告げる花とされてきました。だから季語としては初秋の物として扱われているんですね。ここにも実際の季節感とのずれがありますね。
初秋という言葉を用いましたが、これも前述の二十四節気に基づく区分です。立秋からおよそ1ヶ月後の白露(9月8日頃)の前日までが初秋にあたります。
だから9月中旬や下旬になって朝顔の句を詠むとちょっとおかしな事になってしまいそうです。ご注意を!
ところで、朝顔を季語にした俳句というと何を思い浮かべますか?続いてはあの有名な句を紹介していきます!
朝顔を季語に用いた俳句
朝顔を季語に用いた俳句で最も有名な物に次の句があります。
朝顔に つるべ取られて もらい水
(意味)井戸に水を汲みに行ったら、朝顔の蔓がつるべに巻き付いている。これを取り外してつるべを使うのは無粋なのでそのままにして、お隣に水をもらいに行くことにした。
加賀千代女(かがのちよじょ)の作とされる一句です。千代女は江戸時代の女流俳人として有名ですね。
句の中のつるべ(釣瓶)とは井戸の水をくみ上げるためのカラクリで、ロープの先に桶を結んで滑車に通した物です。
折角つるべに巻き付いてきれいに咲いている朝顔を外してしまうのは可愛そうだと思ったのでしょう。自然に咲く朝顔にも女性らしい優しい気持ちを向けた句ですね。
さて、ここまで季語としての朝顔についてご紹介してきました。朝顔のように季語として使われる季節と実際の季節にずれがあるものって意外に沢山あるんですよ!ついでにチェックしてみましょう。
秋の季語だけど実際には夏の物事
調べてみると、秋の季語だけど実際には夏の物である言葉がこんなにありましたのでご紹介します。
- 枝豆(暑い日にはビールのつまみに最高!)
- 七夕(旧暦では8月の行事)
- 盆に関する語(盆休み、送り火、茄子の馬など)
- 終戦記念日(8月15日)
- お中元(元は秋の行事)
- 西瓜(すいか)
どれも一般的感覚としては夏の風物詩ですが、俳句の季語としては秋に分類されるんですね。スイカなんて感覚的には完全に夏なんですけどね。
俳句を趣味にされている方は一句詠むときに歳時記などでよく調べてからにした方がいいかも知れません。
他にも迷いやすい季語として五月雨、野分。小春日和などについても調べてみました。有名なあの句の裏エピソードも紹介していますので楽しめる記事になってると思います.ぜひ合わせてご覧下さいね。
まとめ
いかがでしたか?朝顔が秋の季語という事実もビックリですが、その裏に隠された奥深い事情というものもあるんですね。
9月に入ってから朝顔を季語にした句を詠んでいると、詳しくない人には変な顔をされそうです。そんな時には怒らずに教えてあげると博識を尊敬されるかも知れませんよ!
それでは今回の記事の内容をおさらいしておきましょう。
- 朝顔が秋の季語である理由は、季語が二十四節気に基づいているためです。
- 朝顔という季語は9月7日頃、白露という日の前日まで使うことができます。
- 朝顔を季語に用いた加賀千代女の句を紹介しました。
- 実際には夏だけど秋の季語に分類されている物事を紹介しました。
これから俳句を詠むときにも味わうときにも、この季語は本当にこの季節で合っているのかな?という視点も持っていきたいものですね。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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