小春日和という言葉を耳にする事があります。
でも私、結構ないい年までこの言葉を完全に勘違いしていたんですよ。3月頃になって友人に「こんな日を小春日和って言うのかねぇ」って言ったことがあるんです。
彼は少しポカンとした後、やにわに大爆笑しました!私としては何故笑われたのか意味が分かりませんでしたが、彼の話を聞いて顔を真っ赤にした覚えがあります。
あなたは小春日和という言葉の正しい意味を知っていますか?私の様に恥を掻いた経験はないでしょうか?
そんな小春日和ですが、俳句の季語として用いるのは秋なのか冬なのか?はたまた私の様に春なのか(笑)?
調べてみたらとても興味深い事が沢山分かってきました。ぜひ最後までお付き合い下さいね。
小春日和という季語を用いる季節は
ズバリ、俳句の中では冬の季語として用いられている言葉です。以下、「きごさい歳時記」というサイトにみられる記述からの引用です。
陰暦十月の異称である。まだ本格的な冬とはならず暖かい日和が春先の陽気を思わせるが、春とは区別して「小春」という。
(出典:きごさい歳時記(http://kigosai.sub.jp/))
「陰暦10月」とは現代の暦に直すと10月下旬から12月上旬にあたります。陰暦(旧暦)は現代の暦とは異なり、年ごとに若干の変動があるので注意が必要です。
実生活の中でも、11月から12月の晩秋から初冬くらいの時期の、よく晴れて気温が高く風もない穏やかな日を指して「小春日和」と呼んでいます。
「春」という字の印象から、小春日和のことを早春の暖かく穏やかな日だと勘違いしているケースが多く見受けられますが、これは明らかな間違い。
また、俳句の季語は私たちが実感する季節感よりもやや早い時期に設定されています。その理由は、俳句ではいわゆる二十四節気に準じて季語を設定しているためです。
だから立冬(11月7日前後)を過ぎてから立春(2月4日前後)までの季節は冬ということになります。
他にもいつの季語か迷う言葉に「五月雨」というものがあります。こちらも深掘りをしてみると意外な事が分かりました。松尾芭蕉さんの面白エピソードも紹介しているこちらの記事をぜひご覧下さい。
さて、つづいては「小春」を季語に用いた俳句を紹介していきます。有名な俳人が詠んだものも実は結構あるんですよ!
小春日和を季語に用いた俳句
小春、または小春日を季語に用いた俳句には次のようなものが見られます。
- 小坐敷の丁ど半分小春哉 (小林一茶)
- 小春凪真帆も七合五勺かな (与謝蕪村)
- 小春日や潮より青き蟹の甲 (水原秋櫻子)
- 痩村に見ゆるや小春の凧 (正岡子規)
- 小春日の心遊びて部屋にあり (高浜虚子)
- 生垣の上より語る小春かな (夏目漱石)
「小春日和」では「こはるびより」と6音となり、俳句の中では極めて使いにくい言葉です。代わりに「小春」「小春日」などを用いてこれらの句が詠まれたんですね。
小春日和と同じ意味の言葉に「小六月(ころくがつ)」があります。これを季語として用いたものに次のような句があります。
- 築山を巽に築き小六月 (寺田寅彦)
- のび~し帰り詣や小六月 (正岡子規)
- 夕靄のなかに波音小六月 (角川春樹)
これらの句を詠んだ時、きっと作者は暖かく心休まる初冬の一日を楽しんでいたんだろうなと考えると、私たちまで心穏やかになってくる気がしませんか?
さて、このように俳句の中では冬の季語として扱われている小春日和ですが、実生活の場面に応用する場合のこともチェックしていきましょう。手紙などの時候の挨拶として使う場合の例を調べてみました。
手紙の時候の挨拶に使う場合
手紙などの中で時候の挨拶として小春日和を用いる場合にはこのようになります。
- 小春日和の候 ○○様におかれましては益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
- 小春日和の穏やかなお天気が続いております。○○様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
- 小春日和の中にもふと冬の冷たさを感じることが多くなってまいりました。
また、締めの挨拶としてはこのように使ってみてはいかがでしょうか。
- 小春日和ながらも本格的な寒さへと向かう季節です。風邪など召されませぬようどうぞご自愛くださいませ。
いやー、こうして調べてみると日本の伝統の中に見られる相手への気遣いは素晴らしいものがありますね。
一方ではふと気になりました。外国では小春日和を表現する言葉ってあるのかな、って。もちろん調べてみましたよ!ぜひ続きをご覧下さい。
小春日和を外国ではこう表現する
外国語の中で小春日和に相当する表現を調べてみると、次のような物が見当たりました。
- 英語 Indian summer(インディアンの夏) / Indian summer day / warm autumn day(暖かな秋の日)
- フランス語 Été indien(インディアンの夏)
- ドイツ語 Altweibersommer(老婦人の夏)
- ロシア語 bab’e leto(婦人の夏)
- 中国語 小阳春
これらの表現を発見することができました。
英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語では「◯◯の夏」となっている部分が共通しているのが面白い所ですね。ドイツ語の「老婦人の夏」などは晩秋の午後に日だまりで編み物をするお婆さんを連想させる気がします。
英語やフランス語にある「インディアンの夏」という表現には次のような由来があるので合わせて紹介します。
「インディアンの夏」の由来は18世紀の北米に遡ります。当時、イギリスから入植してきた人たちと先住民の間で土地を巡る激しい争いが繰り広げられていました。
アメリカ先住民(かつてはインディアンと呼ばれていた)は入植者から奪われた土地を奪還するのを、晩秋から初冬に実行しました。この時期、夜は寒く日中は暖かいため、雪や霜で凍った土地が緩んで足跡を消してくれると見込んでいたからです。
言葉の由来って歴史などに根ざしていることが多くて面白いですね。
まとめ
いかがでしたか?小春日和という季語を用いるのは11月から12月上旬だとはっきりしました。もうこれで2月の俳句に「小春日」などと入れる事はありませんね。
それでは今回の記事の内容をおさらいしておきましょう。
- 小春日和とは冬の季語です。
- 小春、小春日、小六月といった「小春日和」と同じ意味の季語を用いた俳句を紹介しました。
- 実生活の中でも時候の挨拶などで11月から12月上旬に用いられます。
- 外国語で小春日和を表現する言葉を紹介しました。
今年の秋の休日に小春日和があったら何をしようか、今から考えただけでもワクワクしてきそうですね。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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