暖かくなると人も動物も活動が活発になってきて、山の木々の新緑もきれいになってきますよね。
5月って天気が良い日が多くて湿度も低くて、とても爽やかな季節です。
でも同時にいろんな虫も活発になってきて時にはうるさく感じられるものです。
この「うるさい」という言葉は「五月蝿い」とも書くわけだけど、なんだか少し妙な気がしませんか?ハエが本当に鬱陶しいのはもう少し暑くなった7月くらいなのでは?
この「五月蝿い」という表記を初めて使った人って誰だろう?なぜ五月の蝿って書いたの?いつから使われていた言葉?などなど、気になる疑問をリサーチしてみました。最後までぜひお付き合いくださいね!
スポンサーリンク
「五月蝿い」と初めて表記した作家
「五月蝿い(うるさい)」という漢字の表記を初めて使用したのは樋口一葉という説が有力です。
五千円札の顔にもなった、有名な明治の女流作家です。1895年に発表された「十三夜」という作品の中に、次のような表記が見られます。
してお内儀さんはと阿關の問へば、(中略)是非もらへ、やれ貰へと無茶苦茶に進めたてる五月蠅さ、何うなりと成れ、成れ、(後略)
(出典:十三夜(樋口一葉 著))
一説には夏目漱石が有名な「坊っちゃん」という作品の中で使ったのが最初ではないか、とも言われています。しかし、「坊っちゃん」の中に「五月蝿い」という表記は見当たらず、「うるさい」という表記が一箇所だけありました。
それで生徒がおれの事を赤手拭赤手拭と云うんだそうだ。どうも狭い土地に住んでるとうるさいものだ。
(出典:坊っちゃん(夏目漱石 著))
さらに「坊っちゃん」の発表年は1906年。樋口一葉の「十三夜」より11年も後の話なのです。
こうした理由で樋口一葉が「五月蝿い」と表記したのが初めてという説が有力視されるわけです。
蛇足ですが、夏目漱石の父親は樋口一葉の父親の上司で、金の貸し借りをするほど懇意にしていたそうです。だとしたら互いに知り合いで、交流する中で文学的表現の情報交換などもしていたかもしれませんね。
ではなぜ「五月蝿い」という当て字をしたのでしょうか?5月といえばまだそれほど暑くもない時期です。本当に5月の蝿って五月蝿いと思いますか?
五月蝿とは「五月の蝿」ではなかった?
「五月蝿」は「さばえ」と読み、現在の6月上旬~7月上旬に群れて飛んでいるハエのことです。
「五月蝿(さばえ)」という表現は古くは日本書紀や万葉集にも見られます。当時使用されていた暦の旧暦の5月は、今の6月上旬~7月上旬のこと。
つまり梅雨に入ったり初夏になったりして気温が上がってきた頃に大量発生するハエ=「五月蝿(さばえ)」という訳です。
ではそれぞれどのように使われているかを見てみましょう。
(前略)夜は熛火の若に喧騒ひ、昼は五月蝿如す涌き(後略)
(出典:日本書紀 一書)
(前略)かくしもがもと頼めりし皇子の御門の五月蝿なす(五月蝿成=さばへなす)騒く舎人は 白栲に衣取り着て常なりし笑ひ振舞ひ (後略)
(出典:万葉集 巻三・四七八)
梅雨から初夏にかけての季節に発生するハエを「うるさい」と感じるのは昔も今も変わらない心情なのでしょう。樋口一葉はこの「五月蝿(さばえ)」という表現を借りてきて、当て字として「五月蝿い(うるさい)」としたんですね。
では現在でも5月にハエが「五月蝿い」と思うほどに大量発生することってあるんでしょうか?
スポンサーリンク
ハエ発生のピークは6月~7月
ハエは6月~7月に発生のピークを迎えます。しかし地域によっては4月から発生が始まるため注意が必要です。
熊本県の阿蘇家畜保健衛生所のチラシには次のような記述が見られます。
ハエの発生は、気温が上昇する4~5月よりみられ、6月~7月が発生のピークとなります。
(出典:阿蘇家保だより 平成27年6月号)
愛知県の東部家畜保健衛生所の資料には次の記述が見られます。
ハエは6~7月をピークに8月は若干減少し、秋口に再び増加します。9月以降は、気温や湿度の関係でハエが発生しやすい時期となります。
(出典:http://www.pref.aichi.jp/chikusan/toubu-kachiku/pdfiles/h270727.pdf)
「五月蝿」=旧暦5月のハエ=今の6月から7月、という構図は間違いではないとわかります。同時に、4月5月でも地域によってはハエの発生が見られることもあるようです。
まとめ
いかがでしたか?あなたの疑問解消のお役に立てたでしょうか?以下にまとめておきます。
まとめ
- 「五月蝿い(うるさい)」という表記を初めて使ったのは樋口一葉という説が有力です。
- 古くは日本書紀や万葉集に「五月蝿(さばえ)」という言葉が見られます。
- 旧暦の5月は現在の6月~7月にあたり、ハエ発生のピークに重なります。
- 地域によっては5月でもハエの発生が見られます。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
この記事へのコメントはありません。