お盆になるとテレビでは終戦特集番組やアニメ映画「火垂るの墓」などがよく放送され、今年もお盆が来たなという気分になるものです。
そして8月15日の恒例行事といえば、何と言っても正午の黙祷でしょう。甲子園の球児たちもこの時間だけはプレーを中断して観客と一緒に1分間の黙祷を捧げます。
実はこの黙祷は、どんな宗教を信じていても参加できるってご存知でしたか?
私は仏教の檀家生まれで実家には仏壇と神棚がある、ごく一般的な日本人です。この日にはやっぱり黙祷を忘れずに捧げるようにしていますが、仏教とは関係ありませんので手を合わせることもありません。
でもよく考えるとなぜ正午で1分間なのか、そこに理由はあるのか?って不思議な気がしませんか?
そこで調べてみたらとても興味深い話が次々と出てきましたのでご紹介しちゃいます!ぜひ最後までお付き合いくださいね。
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終戦記念日に黙祷する時間
終戦記念日に行われる黙祷は正午から1分間です。日本国民のおよそ40%がこの時間に一斉に黙祷を捧げると言われています。
1億2千万人の40%といえば4千8百万人!これだけの日本国民が仕事やレジャーの最中であっても手を止めて目を瞑り、同時に祈りを捧げるなんて凄いと思いませんか?
ではなぜ正午なのか、なぜ1分間なのか、さらに深掘りをしてみましたので続けてご覧ください。
正午に黙祷をする理由
黙祷開始が正午になった理由は、終戦当日の正午に昭和天皇のいわゆる「玉音放送」がラジオで流されたことに由来します。さらには法律で8月15日の一定時刻の黙祷を推奨するように定められています。
終戦の玉音放送は今でも時々テレビなどで再現されることがあります。「堪へ難きを堪へ、忍び難きを忍び…」というフレーズを聞いたことはありませんか?
玉音放送とはこの様なものでした。
1945年8月15日正午、ポツダム宣言の受諾と日本が降伏する旨がNHKラジオで放送されました。レコード盤に予め録音した昭和天皇の声により国民へと伝えられました。天皇陛下のお声を国民が聞いたのはこれが史上初だと言われます。
これが由来となって、後に法律で終戦の日に黙祷を捧げるように推奨することが定められました。
『「戦没者を追悼し平和を祈念する日」について(昭和57年[1982年]4月13日閣議決定)』という法律の中には次のような文言があります。
式典当日は、(中略)本式典中の一定時刻において、全国民が一斉に黙とうするよう勧奨する。
こうした一連の状況の中で、「日本の降伏 ⇒ 正午の玉音放送 ⇒ 正午の黙祷」という共通認識が日本の中で形作られていったんですね。
ではなぜ黙祷は1分間なのでしょうか?
1分間の黙祷を捧げる理由
1分間の黙祷を捧げる理由は、実ははっきりしていません。
敢えて言うなら、黙祷を始める事となった全国戦没者追悼式や他の公式行事で1分間の黙祷をしたことで慣例的に1分間となった、と言えるでしょう。
「12時00分開始の黙祷で1分以内に終わると、祈っていない12時00分が存在することになるから」といった説も見られますが、明確な根拠はないようです。
実は黙祷は1分間と明確に決まっているわけではありません。前述の『「戦没者を追悼し平和を祈念する日」について』の中でも1分と定めているわけではないんです。
公式行事ではほとんどが1分間ですが、公式以外の場での黙祷は「1分は長すぎる」という理由で30秒だったり、10秒だったりと簡略化されることも珍しくありません。
そんな黙祷ですが、正しい作法を知っておいていざという時に恥をかかないようにしておきたくないですか?続いては黙祷の作法です。
正しい黙祷の作法
黙祷の作法は次の3点だけ抑えておけば大丈夫です。
- 決められた時間を
- 目を瞑り黙って動かず
- 祈りを捧げる
これだけです。
黙祷は宗教に関係なく行われます。仏教の信徒でもキリスト教でもイスラム教でも他の宗教でも、何を信仰していても誰でも参加できる祈りの作法なのです。
だから上の3点だけ守っていれば、手を合わせても頭を下げても良いのです。祈りを捧げる対象は亡くなった方でも神様でもご先祖様でもいいんです。
そして大切なことは、黙祷は強制されてするものではない事です。自分の意志で自発的に行うものなのです。逆に言うと黙祷の場所、黙祷の時間に黙祷をしないことも自由なんですね。
でも黙祷をしないという選択をした場合、最低限のマナーとして物音を立てたり声を出したりしないことが必要です。
続いては、黙祷はいつから行われているのかを調べてみた結果をご覧ください。
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黙祷の起源
黙祷の起源といえるものがあるのか、深掘りしてみた結果をご紹介します。最も古いと思われるものは中国のようです。
唐代の中国には存在した
唐代の韓愈(かんゆ、768年- 824年)という政治家が残した詩の中に、「潜心默禱若有応 豈非正直能感通」という言い回しが見られます。
このことから、中国では1200年前には「黙祷」という言葉が存在したか、こうした概念があったと考えられます。
しかしもっと明確な黙祷の形が出来上がるのはずっと後の時代になります。
イギリスでの黙祷の始まり
イギリスでは国王のジョージ五世の発案で「silent prayer(直訳:沈黙の祈り)」が行われました。
これは1919年11月11日11時に第一次世界大戦の惨禍に対して捧げられたものです。
日本では明治天皇の大喪の礼から
日本では明治天皇崩御に伴う大喪の礼で行われたのが最初と見られています。
1912年9月8日の読売新聞には「市民の黙祷と学生」という記事が見られます。また「明治天皇紀」という書籍の中には「市民一斉に黙祷し」と記述されました。
その後一般に浸透したのは、関東大震災の死者に対して行われた黙祷がきっかけとなりました。
1923年9月1日11時58分に関東一円を襲った地震で亡くなった方の冥福を祈るため、翌年の1924年同日に東京で慰霊祭が催されました。その式典の中で11時58分から1分間の黙祷を捧げました。
このことから、災害で多くの方が犠牲になるなどの大事件があった日時に合わせて黙祷を捧げる慣習が一般化していったんですね。
黙祷以外で祈りを捧げる方法は?
終戦記念日に黙祷以外の方法としては、東京にある靖国神社や全国各地の護国神社に参拝をする方法があります。
8月15日にはこれらの場所で戦没者慰霊祭が執り行われ、戦没者の遺族を始め多くの方が参加をしておられます。
参拝をするのはもちろん無料。特に申し込みも必要ありません。昇殿参拝をするには事前の申し込みが必要です。
ただしこれらは神道の宗教施設ですので、参拝の際には十分な配慮が必要でしょう。神社参拝のマナーもチェックしておきましょう
また同日に全国戦没者追悼式が行われます。こちらは東京在住の戦没者遺族が対象で、会場に入ることができるのは200名だけです。会場で祈りを捧げるのは少し難しいかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?黙祷の慣習が実は意外と最近になって根付いた物だというところにはビックリしましたね!個人的にはどんな人でも参加できる行為だという部分がとてもいいと思うんです。
黙祷を捧げる方角についてはこちらの記事も合わせてご覧下さいね。
それでは今回の記事の内容をおさらいしておきましょう。
- 終戦記念日には正午から1分間の黙祷を捧げます。
- 昭和天皇の玉音放送が8月15日正午に放送されたのが由来です。
- 1分間という時間は公式行事の黙祷の慣習に準じています。
- 黙祷は黙って目を閉じ、動かずに祈りを捧げるのが作法です。
- 中国、イギリス、日本での黙祷の始まりをご紹介しました。
- 8月15日に靖国神社などに参拝することで祈りを捧げる方法もあります。
終戦の日は多くの日本人の強い思いを馳せる日でもあります。この日には歴史を振り返ってみて今の生活があることに感謝の祈りを捧げてみるのも良いことかも知れません。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
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