9月になると台風が日本を襲うことが多くなってきます。
私、台風が来るとちょっとワクワクする部分もあるんです。「おー、風が強くなってきた」なんて。
それで風が弱くなってきて「温帯低気圧に変わりました」なんて天気予報で言うとちょっとガッカリしたりして。不謹慎ですね。(>ω・)
でもちょっと待って?台風が弱くなると温帯低気圧になるの?弱くなって熱帯低気圧になるんだっけ?
あなたはこの二つの違い、区別できますか?そもそも台風とはどう違うんでしたっけ?
そんなわけで調べてみたらとても興味深い事が分かってきました!
それではぜひ最後までお付き合いくださいね。
スポンサーリンク
台風、熱帯低気圧、温帯低気圧の違い
結論から書くと、台風は熱帯低気圧の一種です。それに対して温帯低気圧と熱帯低気圧は全く種類の違う低気圧です。その理由は両者が発生する過程や持っている構造が異なるからです。
よく「台風並みの低気圧」などという言葉を耳にします。これは低気圧に伴う風の強さが台風並みという意味であって、決して台風そのものではないんです。
ではこれらの違いについてより詳細に見ていきましょう。まずは台風と熱帯低気圧の違いについてハッキリさせていきます。
台風は熱帯低気圧の一種
台風と熱帯低気圧の違いはズバリ風の強さ、この一点です。
熱帯低気圧は南の海上で暖められた空気が渦を巻く上昇気流となって作られます。その時に周りの空気を集めることで渦の中心へと向かう風が起こります。
この風を計測して10分間の平均を取り、最大風速が秒速17.2mを超えると台風と呼ばれるようになります。
続いては温帯低気圧と熱帯低気圧の違いをご覧くださいね。
温帯低気圧と熱帯低気圧は構造が違う
簡単に書くと、温帯低気圧は冷たい空気と暖かい空気がぶつかることで発生します。対して熱帯低気圧は暖かい空気自体が渦を巻いて発生します。
まずは温帯低気圧の構造から説明します。日本の主に北西には大陸があり、そちらからは冷たい空気が流れ込みます。一方南からは暖かく湿った空気が北上してきます。
温度も湿度も異なった2種類の空気が触れ合うと、暖かく湿った空気は上に昇ろうとし、冷たく乾いた空気は下に潜り込もうとします。ここで上昇気流が発生します。
暖かい空気は湿っていますから、昇ると急速に冷やされて雨雲を作り出して雨を降らせます。
この2種類の空気がぶつかる場所が前線と呼ばれます。前線の冷たい空気側で雨になることが多いのはこういう理由です。
続いては熱帯低気圧です。日本より南の熱帯と呼ばれるエリアでは太陽により海が暖められて上昇気流が発生します。
北半球では上昇気流が発生するところで「コリオリの力」という作用により反時計回りの渦ができます。ここでは単純に、「上昇気流=渦巻き」と考えてください。
(コリオリの力の解説はとても難しいため省略します。興味がある人はこちらのリンクを参照してください。 ⇒ Wikipedia 「コリオリの力」)
こうして一旦できた渦巻きは周りの暖かい空気を吸い寄せて更に強い上昇気流を生んで北上していきます。
同時に湿った空気が上昇すると冷やされて強い雨を降らせます。こうして強い風と雨を伴う台風が出来上がるのです。
ところで台風は温帯低気圧に変わる事がありますね。あれは風が弱くなったということなんでしょうか?
「台風が温帯低気圧に変わった」とは
天気予報で耳にする「台風は温帯低気圧に変わりました」とは、北から来た冷たい空気と触れ合って構造が変わったことを意味しています。
台風の風が弱まって温帯低気圧に変わるわけではないのです。逆に言うと、風は秒速17.2mを超えていても台風ではない場合もあるんです。
だから日本付近で台風が消滅しても、暴風警報が出ている間は警戒を続けていくべきなんですね。
暴風警報が出たり解除される基準についてはこちらの記事を参考にしてくださいね。
話は変わりますが、そもそも低気圧とはどういったものなのかお分かりですか?
そもそも低気圧とは
低気圧とは周囲よりも相対的に気圧が低い部分のことです。周囲と比べて気圧が低ければそちらに向かって風が流れ込みます。
この「周囲と比べて低い」ことが低気圧の条件なので、1気圧(1013ヘクトパスカル)より高くても低気圧となることもあります。
この低気圧のうちで近頃耳にすることが多くなった言葉に「爆弾低気圧」があります。これは何か特殊な低気圧なんでしょうか?
爆弾低気圧はこんな物
爆弾低気圧とは俗語で、温帯低気圧の中でも急速に発達して台風並みの風と雨を伴うものを指します。
現在、気象庁では「爆弾低気圧」は使用を控える用語としており、代わりに「急速に発達した低気圧」などと表現しています。
NHKでは「猛烈に発達した低気圧」、読売新聞では「猛烈低気圧」などと表現するようにしているようです。
よく似た俗語に「ゲリラ豪雨」というものを聞きませんか?ゲリラ豪雨の対策はこちらの記事からどうぞ。
話を台風に戻して、記録に残っている日本の台風災害についてチェックしてみませんか?
スポンサーリンク
過去の台風災害の事例
記録に残っている台風災害を三つご紹介します。ご紹介するのはいずれも死者が2,000人を超えた「昭和の三大台風」と呼ばれるものです。
最大死者数を出した伊勢湾台風
1959年9月26日の伊勢湾台風は死者4,697人、行方不明者401人と記録上最悪の大災害でした。最も被害の大きかった愛知、三重から上陸して日本を縦断、各地で甚大な被害をもたらした台風です。
最も勢力を強めていたときで中心気圧894ミリバール(当時の気圧の単位。ヘクトパスカルと同じ)、最大風速秒速75m!
潮岬に近づいた頃にはやや勢力を弱めていましたが、中心気圧920ミリバール、最大風速秒速60mと超大型の規模を保ったままでした。
台風の吸い上げ効果により高潮が発生し、伊勢湾では海水が防潮堤を越えたり決壊させました。また海水が河を遡上したことで洪水が発生し多くの家屋が流されたり床上浸水の被害に遭いました。
気象庁でも早くから日本への上陸を予測して警戒を呼びかけていました。そしてほぼ予測どおりの進路をとったにも関わらずこれだけの被害を及ぼすほど強烈な台風だったんです。
記録的な低気圧だった室戸台風
室戸台風で特筆すべきは上陸時の中心気圧911ミリバールという低さです。これは統計開始以前の記録のため参考扱いにされていますが、歴代で最も低い中心気圧と言えます。
1934年9月21日に高知県の室戸岬に上陸し、京阪神を中心に多大な被害をもたらしました。死者2,702人、行方不明者334人を記録しています。
秒速60mの風速を記録したのを最後に室戸岬測候所の観測機が故障したため、最大瞬間風速は不明です。しかしこの秒速60mが基準となって、その後の建築物の耐風性が秒速61mに耐えられるように定められました。
当時は木造建築が多かったことと風速が最大に達したのが午前8時というタイミングが重なって、学校の木造校舎が瞬間的に破壊され、中にいた生徒や職員、迎えに来た保護者に多くの犠牲者が出ました。
終戦直後の日本を襲った枕崎台風
枕崎台風は1945年9月17日、終戦直後の鹿児島県川辺郡枕崎町(現枕崎市)を襲った超巨大台風です。特に原爆で壊滅状態だった広島では死者2,000人を超すなど、終戦直後の日本に追い打ちを掛けました。
トータルでの被害は死者2,473人、行方不明者1,283人となっています。
上陸時の中心気圧は916ミリバールで、参考記録ながら室戸台風に次ぐ数値です。最大瞬間風速は宮崎県の細島灯台で秒速75.5mを記録しています。
呉市内では豪雨による土石流が発生して住宅が流され、1,000名以上の命が失われました。また佐伯郡大野町では病院が土石流に直撃して被爆者、医療従事者などが100名以上も亡くなりました。
まとめ
いかがでしたか?台風、熱帯低気圧、温帯低気圧のちがいについてハッキリしたでしょうか?私自身、てっきり台風が弱くなると温帯低気圧になるものとばかり思っていたのでとても意外でした!
それでは今回の記事の内容をおさらいしておきましょう。
- 台風は熱帯低気圧の1種で、風が一定以上の強さになると台風と呼ばれます。
- 熱帯低気圧と温帯低気圧は構造が異なる別物です。
- 爆弾低気圧は温帯低気圧の一種を指す俗語です。
- 過去最悪の被害を出した昭和の三大台風についてご紹介しました。
温暖化で異常気象だとか言われる昨今ですが、80年も前の台風にはこんな以上とも言える強さのものもあったんですね。いずれにせよ台風への備えはキチンとしておきたいですね。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
この記事へのコメントはありません。