寒さが増してくる10月や11月、人々の服装や町の様子に季節の移ろいを感じますね。
この季節になると「今年の夏はあんなに暑かったのにねぇ」なんて毎年のように思い返してはため息をつく、寒さは嫌いな私です。
あなたはこの季節にはどんな印象を抱いていますか?やはりちょっと物寂しい冬の始まりという印象でしょうか。スキーやスノボが好きな人は逆に待ちに待った季節の到来かも知れませんね。
そんな寒い季節を象徴するのが「木枯らし」と呼ばれる北風です。それでふと思ったんですが、「木枯らし」っていつの季節を表す言葉なんでしょうか?また俳句の世界ではいつの季語なんでしょうか?
10月の前半には使わないような気もするし、1月や2月ならどうかな?なんてふと考えてしまいました。
そこで調べてみると興味深い事柄が沢山分かってきたので、この情報をあなたとシェアしたいと思います!
ぜひ最後までお付き合い下さいね。
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木枯らしという季語を用いる季節は
現在の俳句の世界では「木枯らし」は冬、特に初冬の季語として用いられます。
木枯らしとは立冬である11月8日頃に吹く強くて冷たい北風のことを指しています。
木枯らしは「凩」とも書き、木の葉を枯らして全て吹き飛ばしてしまう様な風だからこのように呼ばれるんですね。
さて、それでは実際に「木枯らし」や「凩」を用いた俳句があるか調べてみました。続いてご覧下さい。
木枯らしを用いた俳句の例
「木枯らし」「凩」を用いた俳句は様々な著名人によって作られてきました。ここにその幾つかを紹介していきます。
まずは俳句を発明した有名な松尾芭蕉さんの句からです。
木枯らしや 竹に隠れて しづまりぬ
(竹の葉をざわつかせていた木枯らしがそのまま竹林の中に吸い込まれてしまったように静かになったものだ)
凩に 匂いやつけし 返り花
(返り咲きの花が木枯らしに匂いを付けていることだ)
「凩に」の句にある「返り花」とは晩秋から初冬にかけて咲く季節外れの花のことで、返り咲き、狂い咲き、二度咲きなどとも呼ばれます。
続いては森鴎外の一句です。
木枯らしや ひろ野を走る 雲のかげ
(木枯らしに吹かれて広い野原を走って行く雲のかげであることだ)
初冬の晴れた日に木枯らしに吹かれて広々とした野原を渡っていく雲の情景が目に浮かぶようなさわやかな句ですね。
続いては正岡子規の一句です。
凩に しつかりふさぐ 蠣の蓋
(凩の季節になって牡蠣も蓋をしっかりと塞いでいることだ)
冬の味覚である牡蠣も木枯らしにより冬の到来を知ってか、蓋をしっかり塞いでいます。牡蠣を擬人化しているあたりに面白みを感じる句です。
続いては夏目漱石の一句です。
凩の 上に物なき 月夜哉
(凩が吹く上には何もない月夜であることだ)
よく晴れて空気の澄んだ初冬の月夜のさわやかさ、美しさを感じさせる一句ですね。
このように「木枯らし」「凩」を季語とした俳句は多くの著名人に詠まれており、ここに紹介したのはそのうちのほんの一部です。
いずれもこれから本格的な冬を迎えようという時期の寒さ、物寂しさ、澄んだ空気、季節の移ろいなどを感じさせる句ばかりですね。
興味がある人は「木枯らし 俳句」などをキーワードに検索をしてみるとまだまだ沢山出てきますよ。
それでは「木枯らし」という言葉の意味や由来についてさらに深掘りをしていきたいと思います。続いてお付き合い下さい。
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木枯らしという言葉の意味
木枯らしという言葉を辞書で調べてみたところ、次のように定義されていました。
こがらし【木枯らし・凩】① 〔木を吹き枯らす風の意〕 初冬に吹く強い風。 [季] 冬。
(出典:大辞林第三版(三省堂))
このように一般的には初冬に吹く強い風は「木枯らし」と呼ばれるようです。
ところが気象用語としては春一番と同様に、年ごとに「木枯らし1号」というものが認定されます。
では気象庁はこの「木枯らし1号」をどのように定義しているのかを調べてみました。
気象庁によると、「木枯らし1号」とは次のような定義のものを指します。
- 晩秋から初冬にかけて吹く
- 初めての
- 北寄りのやや強い風
ということです。
結構ザックリとした定義ですね。実はこの木枯らし1号、発表されるのは東京地方と近畿地方だけで、時期、気圧配置、風向、風速などを基準としています。
面白いことに、それぞれの場所で若干異なる基準となっているんですよ。次を比較してみて下さい。
- 時期:10月半ばから11月末まで
- 気圧配置:西高東低の冬型
- 風向:西北西から北
- 風速:最大風速が概ね8m/s以上
- 時期:霜降(10月23日~24日)から冬至(12月22日前後)まで
- 気圧配置:西高東低の冬型
- 風向:北より(西北西から東北東)
- 風速:最大風速8m/s以上
- ただし、大阪、神戸、京都、舞鶴、彦根、和歌山、奈良のうち3地点以上で観測した場合
という訳で、最も大きく異なるのは近畿地方の方が木枯らし1号を認定する期間を長くとっているところです。
ちなみに、これらの基準に合致しなければ木枯らし1号とは見なされません。そのため、東京地方では1977年や1979年、近畿地方では1992年など、木枯らし1号が発生しなかった年も過去には存在しました。
季語つながりでこちらの記事もお薦めです。松尾芭蕉の有名な句の面白エピソードも読めますよ。
まとめ
いかがでしたか?木枯らしという言葉は初冬を表す季語としては持って来いという気がします。そのためか木枯らしを季語として詠まれた句がこんなにも沢山あることが分かりました。
個人的には「木枯らし1号」という気象現象が「春一番」と対をなしているようで面白いなと思いました。
それでは今回の記事の内容をおさらいしておきましょう。
- 「木枯らし」「凩」という言葉は初冬の季語として用いられます。
- これらの季語を用いた句の幾つかを紹介しました。
- 木枯らしという言葉は、「初冬に吹く強い風」と辞書に定義されています。
- 気象庁では基準を設けて東京地方と近畿地方のそれぞれで「木枯らし1号」を認定し発表しています。
木枯らしが吹く季節は風邪やインフルエンザも流行する時期と重なるものです。暖かくして体調を崩さないように気をつけたいですね。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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