選挙の日にはメディア各社も特番を組んだりして報道に熱が入ります。
選挙の日の特番と言えば、当確の速報で盛り上がりますよね。当確が出た候補にインタビューが行われたりして悲喜こもごもの様子を見ることができます。
でもこの当確って、開票1%とかで出ることがあるけどどんな出し方をしてるのか気になりませんか?
たった1%で当確出しちゃって、あと99%で覆ることとかないんでしょうか?また一旦出された当確が取り消しになったりすることは?
そんな選挙の当確への疑問について答えていきますので、ぜひ最後までお付き合いくださいね。
選挙速報での当確の出し方!
選挙での当確の出し方は、以下のような仕組みを利用して放送局が独自に出す予測が元になっています。その仕組みとは次のようなものです。
- 有権者は「参観人」として開票作業を参観することができる(公職選挙法第69条)
- 各メディアから参観人として派遣されたスタッフは、双眼鏡などを使って各候補への投票数をチェックする
- ある程度の数が把握できたところで統計学の理論に基づいて当確を出す
- 他にも、事前の世論調査や投票所の出口調査などの結果も考慮されている
これだけだと分かりにくいと思いますので、続けて詳しく解説をしていきます。
有権者は開票作業を参観できる
公職選挙法第69条には次のように明記されています。
第六十九条 選挙人は、その開票所につき、開票の参観を求めることができる。
各メディアはこの法律に基づき、アルバイトのスタッフを開票所に派遣して開票の様子を参観します。
派遣されたスタッフは、参観場所(体育館の観覧席などに設けられている)から双眼鏡を用いて開票人の手元を中止します。そして計数器を用いてどの候補に何票が入っているのかを数えていきます。
実際のところ、投票用紙に書かれた文字まで判別することはできません。しかし「右はA党候補者、真ん中はB当候補者、左はその他の候補者」などと大体の所は分かるので、各候補への投票数が読めるという仕組みです。
開票作業はいくつかのグループに分かれて行いますので、派遣されたスタッフも数名ずつの複数グループに分かれて全ての開票作業を見守りつつ数字を把握していきます。
これを合計することで、どの候補に何票が入っているのかを大まかに掴むことができるわけですね。
統計学の理論に基づいて当確を出す
上のようにして把握された票数は統計学の理論に基づいて当確の予測を立てることが可能です。全ての開票が終わらなくても当確を出すことが可能なんですね。
総投票数が10万、20万などといった人口密集地では、統計的には1%程度の開票結果から当確を出すことができると言われています。
この1%という数字に信憑性があるかというと、総投票数1000票の選挙区(そんな選挙区はありませんが)では信頼できなくても10万票の選挙区では十分に信頼できる数字です。
なぜなら、統計とはサンプリングする数字が大きいほど信頼できる数字となるものだからです。
例えば、A候補者が60%の得票をできる状況を想定してみましょう。
総投票数1000票の選挙区では、開票率1%だと総投票のうち10票だけが開票されていることになります。このうちA候補者に入っている票はまだ3票かもしれませんし、8票かも知れません。
最後まで開票すればA候補者には600票が入っている筈なのに、10票を開票した時点ではサンプリング数が少なすぎるためにブレが大きいんですね。
これに対して総投票数10万の選挙区だと開票率1%といっても1000票が開いていることになります。これだけのサンプルがあれば、A候補者の得票は60%である600票に限りなく近づいている筈です。
そして、開票作業は複数グループに分かれて行います。そのため仮に10グループで開票を行っていれば、各100票で1000票を開いたことになります。100票の開票には5分もかからないでしょう。
開票作業が開始してものの数分で当確が報告されるのは、このような仕組みがあるからなんですね。
場合によっては、開票前なのに既に当確が出ている事もあります。事前の世論調査や投票所の出口調査によるサンプリングで特定候補が圧倒的に強いというデータがある場合、まだ開票が始まらない段階で当確の判断が下されるんですね。
選挙の当確は覆ることがある?
選挙の当確は覆ることがあります。当確が出た候補なのに、最後に逆転を許して当選を逃すなどという事態は時折見られることです。
前述したように、選挙の当確は各メディアの調査に基づく予測によります。統計学の理論も取り入れているのでその予測は信頼性が高いですが、実際の場面では外れることもあるんですね。
その理由は以下の通りです。
- 開票所には複数の投票所からの票が持ち込まれることがある
- 全ての投票所の票が同時に開票されるわけではない
- 特定候補が強い地域や弱い地域などがあるため、後から開票される地域によっては逆転する可能性もある
つまり、開票率1%の段階でA候補に当確が出ても、最後に開票される地域でB候補が強い支持を得ている場合は逆転でB候補が当選する、などと言うことがあり得る訳です。
2007年7月の参院選挙における鹿児島選挙区では、鹿児島テレビ放送によって一旦は当確とされた皆吉稲生さんが落選するという事例があります。
これについて鹿児島テレビ放送は誤報を認め、「鹿児島市の開票所での独自集計でカウントミスしたことも一因だが、総合的に判断を誤った」と話しています。
選挙の当確は取り消しもあり得る?
選挙の速報で当確が取り消しとなることもあります。接戦の選挙区などでは複数回にわたって当確が出たり消えたりする事さえあります。
当確は各メディアの判断で出すのは前述したとおり。近頃では当確を出す速さを競うスピード競争となっている感があり、判断を急ぐあまり誤報となって後に当確を取り消すというケースがあります。
この背景には、「当確を最も早く出した局が当選候補にインタビューをする権利がある」という業界の慣例があるためです。
当選した候補の喜びの声を放送できれば視聴率アップに繋がることは想像できますよね。これが欲しくてテレビ局は当確をできるだけ早くだそうとするんですね。
実際のところは、一旦当確が出て万歳三唱も喜びのインタビューもしたけど、次の日には落選の会見をする羽目になったなんて笑えない事態に陥った候補もいます。
まとめ
いかがでしたか?
選挙の当確って意外なほど昔ながらの方式で出していたことが分かりました。選挙って面白いですねぇ。
あなたの一票も、実は開票所の上から双眼鏡で覗かれていて当確を出す材料になっているかも知れませんね。
それでは今回の記事の内容をおさらいしておきましょう。
- 報道機関による当確の出し方は、開票所の参観場所からスタッフが参観をした結果を集めて行われています。
- これには統計学上の理論的な裏打ちがあり、開票1%でも当確を出せる数字となる場合もあります。
- 当確が出ても覆って逆転し落選するケースもあります。
- 当確が一旦出ても取り消しが行われることもあります。
選挙の一票は民主主義の基本です。選挙に行くときはよく考えて投票したいものですね。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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