公立学校の教員採用試験の多くは6月~8月にかけて各自治体ごとに行われ、毎年多くの受験生がチャレンジしています。
倍率も一次試験の段階で8倍~10倍くらいの自治体が多く、専門職への就職試験としては難関の部類に入ります。そのため、多くの参考書が出版されたり、予備校で専門の講座が開かれたりして受験生の手助けになっています。
中でも面接はどの自治体でも必須の試験として取り入れられています。この面接試験について詳しく解説した本やサイトが多数存在しますが、どれを見ても極めて大切な視点が抜けていると言わざるを得ません。
この記事は欠けた視点を補うために作成しました。
その視点とは、「誰が、どのような観点で面接を評価しているか」というものです。
私はある自治体の公立高校教員として20年以上にわたり勤務し、その後教育委員会に異動となり数年間を過ごしてきました。その中で教員採用試験にも関わり、教員時代の数年は面接官としての仕事もしてきました。
これらの経験から、おそらくどの出版社よりも、どのサイト管理者よりも教員採用試験について精通していると自負しています。他では知り得ない内情を踏まえてこの記事を書きました。
なぜ面接をするのか
教員採用試験に面接試験を採用している理由は、筆記試験だけでは計ることができない教員としての資質を見抜くためです。その資質とは何か、以下にまとめました。
- 教育職への意欲、誠実さ、真摯な態度
- 専門知識の深さと情報収集力
- 社会人としての常識、マナー、コミュニケーション能力
- 個人の人間性、感性、経験
私が面接官だった自治体では以上の4つの観点から受験生の資質を評価していました。
いくら筆記試験の点数が良くても、通常のコミュニケーションが成立しない人は教員には向いていませんよね。どんなに英語ができる人でも、真面目に英語の授業を行わない人は英語の教員にはなれません。
つまり、「教員に向いている人を拾い上げる」のと同時に、「教員に向いていない人を排除する」ことを目的に面接試験を行っているとも言えます。
面接官をしているのは誰か
面接である以上、人と人とのコミュニケーションです。会話なのです。会話であればその相手である面接官も当然日々を生きている人間です。感情の無いロボットが相手ではありません。
「はじめに」で述べた、これまでの参考書やサイトにない視点とは、「会話の相手の面接官も人間である」という当たり前の事実です。
物差しではない人間が人間を評価する以上、そこに少なからず主観や直感が入り込む事になります。いきおい、好感を持てる受験生の評価は高くなり、嫌悪感のある受験生の評価は低くなります。
では、この面接官とはどういった立場の人なのでしょうか。
それは、30代後半~40代後半の現場の教員 しかも校務分掌の主任または教頭職にある教員 です。教育委員会の職員などではないのです。
これらの人たちが採用試験の面接官を行っているということは、この採用で自分の学校に配属されるかも知れない人を選んでいる訳です。
自然な流れとして、面接の評価の観点で最も重要なことは面接官の主観で「この人に自分の学校に来てほしいかどうか」となります。
「なぜ面接をするのか」の章で書いた、「教員に向いている人」「向いていない人」というのは、面接官の観点からすると下の図式が成り立ちます。
自分の学校に来てほしいタイプ=教員に向いている人
自分の学校には来てほしくないタイプ=教員に向いていない人
教員にはいろんなタイプがおり、「自分の学校に来てほしいタイプ」と言っても一口ではとても表現しきれません。ここではむしろ、「自分の学校には来てほしくないタイプ」とその理由を示します。
- 身だしなみに無頓着で清潔感がない → 生徒に好かれない、服装の指導ができない
- おどおどして挙動不審 → 生徒になめられる
- 社会人として適切な言葉遣いができていない → 生徒の言葉遣いを指導できない、保護者から嫌われる
- 声が小さく何を言っているのか分からない → 授業が成立しない、連絡事項を生徒に伝えられない
- 質問の意図を理解せず、頓珍漢な答えを返す → コミュニケーションが成立せず、教員間の連携が図れない
- まっすぐに立てない、姿勢良く座れない → 生徒の姿勢を指導できない
- 人の目を見て話すことができない → 生徒、同僚教員とのコミュニケーション不足に陥る
- 問題を抱え込み、自分だけで解決しようとする → 学校全体を巻き込む大問題に発展する恐れがある
自分がいずれかに当てはまっていないかセルフチェックをし、もしも当てはまっていたらすぐに改めましょう。その上であなたの個性を十分にアピールし、面接官に「この人はうちの学校に来てほしい」と思わせれば大成功です。
面接官をしてきた経験から
受験生の大半は卒業を控えた大学生や大学院生、または非常勤講師として一年~数年の経験がある人たちです。「非常勤講師の経験がある方が、体験を踏まえて答えられるから有利なんじゃないの?」と思うかも知れません。
私が面接をしていたときには、講師経験の有無は全く関係ありませんでした。むしろ、講師経験が長い人の中には上記のような困った態度のいずれかに当てはまる人がいて、「ああ、だからこの人は採用されないんだろうな」と妙に納得したものです。
また、中には妙にニコニコと微笑みを絶やさずに受け答えをする受験生もいました。予備校や大学で指導されているのか、余裕がある雰囲気をアピールしたいのかも知れません。
個人的にはこうした受験生に高い評価をつけませんでした。作為的なものというか、「面接官に好印象を与えて良い評価を得たい」という打算を感じるからです。
眉間にしわを寄せて受け答えをしろとは言いませんが、真剣な眼差しから感じ取ることができる強い意欲に勝るものはなく、こういう態度の受験生に高評価を付けたものでした。
おまけとして、個人的に高評価を付けた受験生の様子を示します(あくまで私個人の評価です)。
- 私立高校での正規教員歴ありの40代男性。落ち着き払った態度、豊富な経験に裏打ちされたブレのない受け答え、学年主任・分掌主任としても即戦力になりそうな雰囲気。文句なく満点を付けました。
- 大学4年生、男性。柔道を長くやって来たスポーツマン。教育関連のニュースをよく勉強しており、国の施策や自治体の採用方針を熟知している。部活動指導を通して生徒を育成したいという熱意が伝わってきました。
- 大学4年生、女性。柔らかな物腰。緊張しながらもこちらの質問の意図を見越して期待以上の答えを咄嗟に返してくる鋭さを持っている。体育会系ではなくても生徒に舐められずに堂々と指導できる人物と確信しました。
- 大学院生、女性。ハキハキした物言い、テキパキとした立ち居振る舞い。教育に関する専門知識の深さに舌を巻いた。担任をやらせてみると面白いかもと感じました。
- 非常勤講師、男性。いわゆる教育困難校での授業を受け持ち、学習に後ろ向きな生徒や問題を抱える生徒と向き合っている。「授業で困ったときには問題が大きくなる前に他の教員の力を借り、一緒に考えてもらう」という答えが特に気に入りました。
まとめ
今回の記事は特に教員採用試験突破に向けて努力する皆さんに頑張ってほしくて作成しました。
これを読んでより良い資質を持った人たちが一人でも多く教員として採用されることを期待しています。
以下にまとめを示します。
まとめ
- 教員採用試験面接の解説本、サイトには「誰が、どんな観点で面接をしているか」という視点が抜けている
- 面接は、筆記試験では計れない資質を見抜き、向いている人を拾い上げ、向かない人を排除するために行う
- 面接をしているのは経験豊富な現場の教員で、分掌主任か教頭である。「この人とともに働きたいか」という観点で評価をしている。また、面接で評価されないタイプはこんな人たち
- 私が面接官として高評価を付けた受験生たち
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